Review vol.22「Rising Sun と “O”-正・反・合 の比較」





Vocal Review vol.22
「Rising Sunと“O”-正・反・合の比較」

「Rising Sun」(日本語バージョン)
作詞:m.c.A・T 作曲:YOO YOUNG JIN
6枚目のシングル 2006年4月19日発売

「“O”-正・反・合」(日本語バージョン)
作詞: H.U.B 作曲: YOO,YOUNG JIN
9枚目のシングル 2006年11月8日発売


Review Vol.22は、「Rising Sun」と「“O”-正・反・合」におけるジェジュンの歌唱の比較についてのreviewにしようと思う。
どちらも韓国語の元曲があり、日本語バージョンの歌詞がついている。
なぜ、この2曲を比較しようと思ったかと言えば、どちらもダンシング曲でありながら、彼の歌声が約半年の間に全く変貌を遂げていることを知るのにちょうどいい題材だと思ったからだ。
どちらもワンコーラス、またはツーコーラスほどしか歌っていないのだが、その声の変化は歴然だ。

先ず、「Rising Sun」の方は、聴けばわかるとおり、声を変える前に歌声であり、何の響きもない。固い直線的な歌声がワンフレーズ聞こえてくる。ちょうど音域的には彼の得意な中音域で、その為に若干の明るく優しい声の特質が現れる。
それに比べて「“O”-正・反・合」は、完全に声を変えたあとの楽曲だ。
歌いだしから、彼の綺麗な響きの歌声が聞こえる。ダンシング曲であるために、彼は、強めの声で歌っているのだが、その声に固さはない。
歌いきりのフレーズで強くアクセント気味にフレーズを歌っているにも関わらず、綺麗な響きの歌声だ。
約半年の間に、彼の歌声は、見事に変貌を遂げている。


「声を変える」
「日本人好みの声に作り替える」
と言っても、そう簡単に出来るものではない。

「日本人好みの声」というのは、やや鼻にかかった甘い響きの歌声を言う。
日本人は、直線的で、強い歌声やハスキーな歌声を好まず、綺麗な響きのある甘い歌声を好む。
また、透明感のある響きの歌声も好きだが、それも甘い音色のものを好む。

小田和正、平井堅、布施明、徳永英明など、どちらかと言えばハイトーンで綺麗な響きを持つもの、又は、透明性の高い歌声を好む傾向にある。
それは、日本人の琴線に触れ、涙腺を刺激すると言われる。
反面、力強くハスキーな歌声をどちらかと言えば苦手とする傾向にある。

色のない声よりも、どちらかと言えば、色のある声を好む。
それは、演歌、ポップス、ロックなどジャンルにこだわらない。


東方神起の曲を聞いていると、avexがどのメンバーをメインヴォーカルにするか、非常に悩んだ跡が見える。
韓国での東方神起は、ジュンスの歌声が中心のサウンドで、力強くダンスナンバーも多い。
ジュンスのパワフルで、ハスキーな歌声と歌い方は、韓国人の好みに非常にマッチしている。
日本でデビュー当初、avexは、韓国でのスタイルをそのまま踏襲しようとした。メインにジュンス、又は、チャンミンの力強い歌声を据え、ソフトな歌声のジェジュンには、もっぱらハーモニーを担当させた。
しかし、「明日は来るから」までの5枚は、ブレイクしなかった。
韓国でのTVXQのハーモニーとスタイルは、日本の大衆には受け入れられなかったということになる。
7枚目のシングル「Begin」でオリコンのランキング入りを果たすことによって、東方神起は、TVXQとは別個の色合いを持つ独自のグループとして存在していくことが、日本での成功の鍵になったと言える。
「Heart, Mind and Soul」でいわゆる日本のバラード曲を試し、好感触を得て、「Begin」において、ジェジュンの柔らかい音色を中心に据えたJPOP独自のハーモニー音楽を作り出した。
彼は、「歌声を作り替えるのに、1年半ぐらいかかった」と言っているが、「Heart, Mind and Soul」や「Begin」はその過渡期の楽曲と言える。
もし、彼が、期待通りの結果が出せず、今の歌声を手に入れられていなかったら、おそらく、東方神起は、チャンミンメインのグループになっていたかもしれない。
「日本人好みの歌声に作り替える」と一概に言っても、それが実現するかどうかは、avexにとってもジェジュンにとっても、大きな賭けだったと言える。

この2曲はダンスナンバーでありながら、ジェジュンが歌声を作り替えていくのに、どのような道筋をたどっていったのかを知る一つの手掛かりになる曲とも言える。
声を作り替えるのに、1年半かかった、ということは、日本でデビューした直後から、彼はそのことに取り組んでいたということになる。
デビュー前であるなら、その期間はもっと短縮されていたかもしれない。しかし、彼の場合、既にデビューをし、次々と新譜を渡される中で、当然、今までの発声が彼にとっては安定した歌声であったに違いない。その歌声で歌う一方で、全く別の歌声を手に入れる為に彼だけが、特別に練習を積んでいたと言える。
完全に新しい歌声を身につけるまでは、全く違う二つの発声法を使い分け、コントロールしながら、練習を積んでいたと思われる。
そうやって、「SKY」以降、新しい歌声を短いフレーズから楽曲の中で試し始めたと言える。ほんの1フレーズか、2フレーズの短いメロディーを「SKY」以降の数曲、試したのちに、「Step by Step」のロングバージョンのお披露目となるのである。

この2曲を聴き比べるのは、彼の過渡期の歌声の確認をするという意味で、とても興味深い作業だった。



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