Review vol.15「明日は来るから」

※reviewの加筆文は、最後に書いています。



Vocal review vol.15 「明日は来るから」
4th Single  2006.3.8発売
作詞 TAKESHI SENOO MAI OSANAI
作曲 TAKESHI SENOO


私がVocal reviewを書く理由は、もちろん、多くの方にKim・Jaejoongという歌手の事を知って貰いたい事。
彼のVocalを正しく評価してほしい事。
そして、何よりも彼という歌手が歩いてきた軌跡を記録に残したいからです。

彼のVocalに関してはいろいろな見方があると思います。
でも、少なくとも長い時間、音楽の世界で仕事してきた人間としての私の視点は、fanとして偏ったものではないと思っています。

彼ほど歌唱力と歌唱方法が変化した歌手を私は知りません。
そして、彼の歌唱を聴いて思ったことは、
彼が今後も歌手として進化し続けるだろうという事です。

彼が人間として進化し続ける限り、歌手Kim・Jaejoongは進化し続けます。
それだけは、両国と釜山を聞いて確信したことの一つでした。
また、機会を設けて書きますね。


さて、ちょっと脱線してしまいました。

「明日が来るから」です。

これは、日本活動が始まって約1年が経った頃の曲になります。
日本語の発音にも慣れてきた頃ですね。

歌手は、話せなくてもその言語を歌う事は出来ます。
歌詞に使われる言葉は限られていますから、くり返し練習することで正しい発音を身につけていきます。
もともと母国語の発音に癖のなかった彼は、日本語の発音も実に明瞭です。


この曲はかなり低音域から始まります。
曲自体の音域が「東方神起」時代は、今より約3度ほど低くなります。
これは、構成しているmemberの音域が低いのが原因です。
メロディーラインを彼の得意とする中高音域に設定すると当時のmemberの構成では、ハーモニーを作る事に困難を伴いました。
彼の声の上部のハーモニーを作る事が難しかったのです。
ですから、どうしても彼の得意とする音域よりは少し低めになっていました。


完璧主義の彼は、おそらく低音域で自分の声がノイズ音ばかりになるのが嫌だったと思います。
そこで声にブレス(息)を混ぜて響きを作り出す方法を考え出しました。
考え出した…というのは、おそらくこの頃には、もう個人的に多くのレッスンを受ける事はなかったと思うからです。
日本と韓国の2つの国で仕事をこなしながら新曲を覚えていくのですから、殆んど時間的に個人レッスンに通っている時間はなかったと思います。
それなのに、あきらかにこの曲で彼は低音域を歌う方法を今までと変えてきました。
今までは、地声を使っていました。
ですから少しハスキー気味な声です。
ところがこの曲の低音域を歌う彼の声は、地声ではなく明らかに頭声なのです。


頭声というのは、女性でいう裏声に当たります。
男性の裏声にファルセットヴォイスというのがありますが、ファルセットは、もっと柔らかく響きを抜いた声になります。

彼のこの曲で使っている低音域の声は、ブレスを混ぜた頭声の響きをしています。
ですから、あんなに低音域であっても言葉が明確に聞こえるのです。

そのかわり、息継ぎ音、いわゆるブレス音が聞こえていますね。

これは、結構、現在の彼の歌唱にも存在しています。


息継ぎ音が聞こえる大きな原因に身体が使えていない…という点があります。
腹筋を使わずに喉だけで歌う時、ブレスを混ぜて歌うとこういう声になりがちです。

クラシックでは、息継ぎ音が聞こえる事は、基本的には徹底して直します。
直した上で、感情の高ぶりなどを表現するときにテクニックの一つとして使います。

ただ、この頃の彼には、まだテクニックとしてこれを使う事は出来なかったと思います。


この曲は、JSの曲と言われていますが、よく聞くと結構、彼がリードヴォーカルを取って歌っている部分が多いです。
彼のどんな音域にも対応するソフトな声の響きが、この曲のハーモニーに幅を与えている事だけは確かな事です。


この後、彼の声も歌唱もどんどん変化していきます。

とても楽しみですね。


2011年7月4日(アメブロの旧サイトにて初掲載)




【2017年6月23日 review 追記】

この曲は、ジュンスの曲として有名です。確かにジュンスがメインヴォーカルを取っていて、全体的な印象はジュンスの歌声に彩られています。ジェジュンはあくまでもリードヴォーカルの役目を担っているのですが、この曲は、彼が低音域を出すのに、今までの地声ではなく、柔らかい声を使い始めた曲でもあります。
余りに低音域のために、地声で歌うと声にならなかったのかもしれません。それで息を混ぜて歌う方法を指導されたように思います。
息を混ぜて歌う。
これが簡単なようで実は大変難しいものでもあります。
息を混ぜすぎると息漏れの酷い声になり、混ぜ方が少ないと地声になってしまいます。
低い音域を歌うために、初めて、頭声の発声で歌ってみた、という感じなのかもしれません。
6年前のreviewには、頭声で歌っている、個人レッスンを受けていないように思う、と書いていますが、あらためて今聴き直し、彼の発言などを思い起こすと、この頃から、逆にレッスンが始まったように感じます。

「日本人の好みの歌声に作り替えるのに、1年半かかった」

次々、新曲をこなし、過密なスケジュールをこなしながらのレッスンですから、容易ではなかったと想像出来ます。
その努力の成果が現れ、今の歌声の基礎としてはっきり歌に現れてくるのが、「Step by Step」です。
それまで数曲ありますが、次の「Begin」は、明らかに地声で歌っていますので、まだほんの少しレッスンが始まった頃、という感じなのでしょう。

いずれにしても、彼のその努力がなければ、今の彼の歌声はありません。そして、日本語に出会わなければ、決して手に入れられなかった歌声でもあります。

この曲では、今の彼の歌声の片鱗を低音部に聴くことが出来ます。
これからしばらくは、頭声と地声を行ったり来たり。
なかなか新しい声を安定して出すというのには、時間がかかると思います。

歌手として、「歌声を変えろ」と言われても、なかなか簡単に出来るものではありません。ましてや、既に何年も歌い続け、デビューしてしまっているのです。自分の歌声にファンがイメージを抱いているのも知っていて、その声を変えるのには、勇気がいります。さらに「日本人好みの歌声」に作り替えるというのは、韓国人であり、韓国語の歌も歌う彼にとっては、不安も伴ったかもしれません。そういう中で、彼が、歌声を作り替えたことに同じ音楽人として、心から尊敬します。
その姿勢は、私達のように音楽を勉強する人間と同じもので、彼が真摯に音楽というものに向き合う人なのだということを現している大きなエピソードです。

この曲以降、徐々に彼の歌声が占める割合が増えてくる曲が多くなります。
彼が完全にメインヴォーカルのポジションに着くまでの間、彼の歌声が完全に頭声に転換されるのと比例しての期間になり、その経過を歌から知ることが出来ます。

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