Review vol.23「Step by Step 」


Review vol.23 「Step by Step 」
作詞:H.U.B. 作曲:原一博
9枚目シングル 2007年1月24日発売


この曲において、avexは東方神起というグループの新しいスタイルを提示した。
即ち、ジェジュンと、その他のメンバーの声の住み分けである。

それまでの楽曲において、日本人好みの歌声に改造していく彼の歌声は、それほど長いフレーズを歌っていなかった。
それは、おそらく、その発声がまだ完全に身についたものではなく、音程の高低やフレーズの長短によって、自由自在にコントロールできるまでのレベルになかったのかもしれない。
新しい声を披露するのは、勇気のいる事だ。
今までの彼の歌声のイメージを打ち破るものを提示するには、必ず、新しい声の方が高い評価でファンに受け入れられる必要がある。
その為に、彼が完全にその声で自信を持って歌いきれるレベルになるまで、前面に出すことはなかったように思う。

「Step by Step 」の構成において、その役割分担は、初めてハッキリと提示された。

この曲において、ジェジュンと4人のフレーズが交互に現れるが、Aメロ、A'メロ、Bメロ、B'メロと繰り返されても、サビにおいては、メロディーの終結は必ず彼の歌声であり、この曲のメインボーカルが誰であるのかということをハッキリと提示している。

彼の歌声は、安定しており、メロディーの音階として多用される中、高音部において、非常にソフトで伸びやかな響きの声を披露している。この音色は、他の4人のメンバーのどの音色ともよく融和し、彼の歌声に帰結する事によって、この楽曲の全体を覆う音色が聴衆に提示されている。

彼の歌声は、どこまでも明るく、ソフトで、広がりを感じさせる響きになっている。
これが、サビの歌詞の内容にある

「いつかはきっと 信じて
明日はもっと 届くから
今はStep by Step それでいい ほら
夢まで一緒に歩こう」

にピッタリの音色になっているのである。


この曲によって、ジェジュンの歌声を中心としたハーモニーの世界が東方神起の一つのスタイルである、ということを示したと言える。

彼の歌声は、この曲以降、どんどん透明感溢れる、綺麗な響きになって行く。
このとき、彼は、21歳。
男性として完全に成熟した身体にはなっていない。まだ成長期と言える。
身体の成長と同じように声帯も成熟する。とくに、声帯は、身体の器官の中でも成熟が遅い方であり、まだまだ、彼の声帯は、完成されていない。
彼の肉体の変化とともに、声帯も変化する。
この曲以降、声帯が成熟して行くにつれて、どんどん歌声が安定していく様子を知る事が出来るだろう。

因みに初期の楽曲の中で、この「Step by Step」は、私のお気に入りの曲になっている。
それは、彼の歌声に、新しい歌声で自信を持って歌える喜びを感じるからだ。

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Review vol.22「Rising Sun と “O”-正・反・合 の比較」





Vocal Review vol.22
「Rising Sunと“O”-正・反・合の比較」

「Rising Sun」(日本語バージョン)
作詞:m.c.A・T 作曲:YOO YOUNG JIN
6枚目のシングル 2006年4月19日発売

「“O”-正・反・合」(日本語バージョン)
作詞: H.U.B 作曲: YOO,YOUNG JIN
9枚目のシングル 2006年11月8日発売


Review Vol.22は、「Rising Sun」と「“O”-正・反・合」におけるジェジュンの歌唱の比較についてのreviewにしようと思う。
どちらも韓国語の元曲があり、日本語バージョンの歌詞がついている。
なぜ、この2曲を比較しようと思ったかと言えば、どちらもダンシング曲でありながら、彼の歌声が約半年の間に全く変貌を遂げていることを知るのにちょうどいい題材だと思ったからだ。
どちらもワンコーラス、またはツーコーラスほどしか歌っていないのだが、その声の変化は歴然だ。

先ず、「Rising Sun」の方は、聴けばわかるとおり、声を変える前に歌声であり、何の響きもない。固い直線的な歌声がワンフレーズ聞こえてくる。ちょうど音域的には彼の得意な中音域で、その為に若干の明るく優しい声の特質が現れる。
それに比べて「“O”-正・反・合」は、完全に声を変えたあとの楽曲だ。
歌いだしから、彼の綺麗な響きの歌声が聞こえる。ダンシング曲であるために、彼は、強めの声で歌っているのだが、その声に固さはない。
歌いきりのフレーズで強くアクセント気味にフレーズを歌っているにも関わらず、綺麗な響きの歌声だ。
約半年の間に、彼の歌声は、見事に変貌を遂げている。


「声を変える」
「日本人好みの声に作り替える」
と言っても、そう簡単に出来るものではない。

「日本人好みの声」というのは、やや鼻にかかった甘い響きの歌声を言う。
日本人は、直線的で、強い歌声やハスキーな歌声を好まず、綺麗な響きのある甘い歌声を好む。
また、透明感のある響きの歌声も好きだが、それも甘い音色のものを好む。

小田和正、平井堅、布施明、徳永英明など、どちらかと言えばハイトーンで綺麗な響きを持つもの、又は、透明性の高い歌声を好む傾向にある。
それは、日本人の琴線に触れ、涙腺を刺激すると言われる。
反面、力強くハスキーな歌声をどちらかと言えば苦手とする傾向にある。

色のない声よりも、どちらかと言えば、色のある声を好む。
それは、演歌、ポップス、ロックなどジャンルにこだわらない。


東方神起の曲を聞いていると、avexがどのメンバーをメインヴォーカルにするか、非常に悩んだ跡が見える。
韓国での東方神起は、ジュンスの歌声が中心のサウンドで、力強くダンスナンバーも多い。
ジュンスのパワフルで、ハスキーな歌声と歌い方は、韓国人の好みに非常にマッチしている。
日本でデビュー当初、avexは、韓国でのスタイルをそのまま踏襲しようとした。メインにジュンス、又は、チャンミンの力強い歌声を据え、ソフトな歌声のジェジュンには、もっぱらハーモニーを担当させた。
しかし、「明日は来るから」までの5枚は、ブレイクしなかった。
韓国でのTVXQのハーモニーとスタイルは、日本の大衆には受け入れられなかったということになる。
7枚目のシングル「Begin」でオリコンのランキング入りを果たすことによって、東方神起は、TVXQとは別個の色合いを持つ独自のグループとして存在していくことが、日本での成功の鍵になったと言える。
「Heart, Mind and Soul」でいわゆる日本のバラード曲を試し、好感触を得て、「Begin」において、ジェジュンの柔らかい音色を中心に据えたJPOP独自のハーモニー音楽を作り出した。
彼は、「歌声を作り替えるのに、1年半ぐらいかかった」と言っているが、「Heart, Mind and Soul」や「Begin」はその過渡期の楽曲と言える。
もし、彼が、期待通りの結果が出せず、今の歌声を手に入れられていなかったら、おそらく、東方神起は、チャンミンメインのグループになっていたかもしれない。
「日本人好みの歌声に作り替える」と一概に言っても、それが実現するかどうかは、avexにとってもジェジュンにとっても、大きな賭けだったと言える。

この2曲はダンスナンバーでありながら、ジェジュンが歌声を作り替えていくのに、どのような道筋をたどっていったのかを知る一つの手掛かりになる曲とも言える。
声を作り替えるのに、1年半かかった、ということは、日本でデビューした直後から、彼はそのことに取り組んでいたということになる。
デビュー前であるなら、その期間はもっと短縮されていたかもしれない。しかし、彼の場合、既にデビューをし、次々と新譜を渡される中で、当然、今までの発声が彼にとっては安定した歌声であったに違いない。その歌声で歌う一方で、全く別の歌声を手に入れる為に彼だけが、特別に練習を積んでいたと言える。
完全に新しい歌声を身につけるまでは、全く違う二つの発声法を使い分け、コントロールしながら、練習を積んでいたと思われる。
そうやって、「SKY」以降、新しい歌声を短いフレーズから楽曲の中で試し始めたと言える。ほんの1フレーズか、2フレーズの短いメロディーを「SKY」以降の数曲、試したのちに、「Step by Step」のロングバージョンのお披露目となるのである。

この2曲を聴き比べるのは、彼の過渡期の歌声の確認をするという意味で、とても興味深い作業だった。



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Review vol.21「miss you」


Vocal Review vol.21 「miss you」
作詞:H.U.B. 作曲:鈴木大輔
日本の8枚目のシングル。
エイベックス・rhythm zoneより2006年11月8日発売


ジェジュンは、この曲の2ソロ目を担当。のっけから、完全に頭声の発声だ。
次々、ソロで歌う4人のフレーズの声を聴き比べてみるといい。全く彼の声だけが別次元の発声になっているのを感じるはすだ。
他の4人の歌声に必ず存在する地声の特徴的とも言えるノイズ音が、彼の歌声にだけは存在しない。
このノイズ音の存在が、実はハーモニーを作る時には、非常に厄介な存在になる。それぞれが持つノイズ音の波長が異なれば、それがハーモニーを崩す雑音となって存在するからだ。
彼の歌声が、誰の歌声とも非常に融和するのは、彼の声にノイズ音が存在しないからだ。ノイズ音とは、シャーシャーという掠れたような音のことを言う。これが、よくいえばハスキーな声ということになるのかもしれないし、直線的なストレートな声で、響きを感じない声にもなる原因だ。
彼の歌声を他の4人の歌声と聴き比べると、もう一つ、典型的な特徴が聞き取れる。それは、歌詞の最後の言葉の語尾が、「い」の発音で終わるところの歌いきりの響きに特徴的なものが現れる。
1番のサビ部分の彼のフレーズ「どこまでも守るから見つめて欲しい」の「い」の発音、また、2番のサビラスト「どこまでも守るから見つめて欲しい」の「い」の発音。このどちらもが、綺麗な響きで終わっている。
通常、「い」の発音は、非常に難しく、キツイ発音になりがちだ。特にフレーズの最後に「い」の母音がくる言葉の歌い方は、歌手にとって非常に厄介な代物で、歌いきりが難しい。キツイ歌いきりになってしまうと、そこだけがクローズアップされた言葉として印象に残ってしまう。頭声の発声をしていても、「い」が一番難しい母音になる。この部分を彼は見事に歌いきっている。
今回、慎重に聴き直したが、彼の歌声は、完成されていて、「Sky」から僅か3ヶ月足らずの間に完璧に頭声を身につけてきたことがわかる。
どれほど練習したのだろうかと思った。頭声を要求されたのは、彼だけだから、おそらく、メンバーのいない場所で、一人で黙々と練習を積んだに違いない。何度も何度も、練習を積み重ねたはずで、忙しいスケジュールの合間に彼だけが休憩時間や睡眠時間を削って、練習したと思われる。それを考えただけでも私は頭が下がる。そして、彼の並々ならぬ決意を感じるのだ。

Reviewを書いていて、このように彼の歌声の成長を発見出来る瞬間が一番、自分が音楽をやっていて良かったと思える瞬間だ。そして、ジェジュンという歌手の軌跡を辿ることが出来るのを幸せに思う。
彼は、最初から、努力の人だった。
真面目に努力し続ける人で、今も全く変わらない。だからこそ、歌手として、どこまでも進化し、可能性は無限に広がる。
その土台を支えるのは、この時期に彼が死にものぐるいで身につけた発声法にあることだけは、確かなことだと言える。

miss you

追記しました。Review vol.20「Sky」



Review vol.20「Sky」
作詞:H.U.B.
作曲:H-WONDER。
7枚目のシングル。
エイベックス・rhythm zoneより2006年8月16日発売


この曲でジェジュンは、歌いだしの2フレーズを歌っている。あとは、最後のアドリブ的展開のソロヴォーカルライン、即ちオブリガードの部分だ。
前の曲「Begin」で地声による歌唱は終わり、と書いたが、まさにその通り。この曲の歌いだしから彼は明らかにブレスを混ぜた発声になっている。音域的には、低中音域のメロディーなのだが、それまでの固く伸びのない歌声とは異なり、弾力性のある響きのある声になっているのがわかるだろうか?
それまでの低中音域の声は、元々持っている地声の柔らかさで歌っていた。その為に、響きはない。
地声と頭声の顕著な違いは、声に響きがあるかどうかだ。わかりやすく言えば俗に言うビブラートがあるかどうか、という話になる。頭声で歌っていても、ビブラートのない人はいる。しかし、長いフレーズを歌えば必ず少しはビブラートが存在する。
また、このビブラートの有無と良質のビブラートを持っているかどうかが、聴く人に心地よい感動を与えるかどうか、という印象に大きく影響を与える。
地声では、決してビブラートは存在しない。

地声で歌っていた韓国での1年間と日本での1年目において、彼の声にはビブラートは存在しない。
「デビュー当時からの曲を聞いたのですが、どれが彼の歌声なのか全くわからなかった」と言った新規ファンがいた。
それぐらい、彼の歌声は、大きく変遷した。

この曲の歌いだしと最後のオブリガードの部分には、今ほどの色艶はなくとも、彼の歌声だとわかる特徴がいくつも存在する。
たとえば、息を混ぜた柔らかい発声音。今ほどの艶はないが、ビブラートの存在。低音域にも関わらずBGMに負けない良質の響き。伸びやかな高音。
特に後半部分におけるオブリガードの高音の伸びは、今までの彼の歌声とは全く異なる。「Begin」においての高音の伸びと聴き比べるとよくわかるかもしれない。
「Begin」の高音には、ビブラートが存在せず、さらに天井の存在を感じる。即ち、これ以上の高音は無理だろうと感じさせるものが存在する。しかし、「Sky」における高音部には、それが存在しない。もっと高音部でも歌えそうな伸びを明らかに感じる。低音部から高音部へと駆け上がるメロディーの流れに勢いを感じる。
これは、彼がブレスの勢いに乗せて、声を高く放り上げている証拠でもある。
このようなテクニックは、「Begin」には存在しなかったのだ。
この曲は、頭声を試している最初の曲であり、それゆえ、多くのパートを歌っていない。しかし、確実に彼の音域は広がり、響きを身につけている。
それを確かめることが出来る1曲なのだ。


追記 オブリガードについて

オブリガードというのは、メロディーとは異なる、メロディーを引き立てる役とも言えるもので、独自のメロディーラインを展開する。それは、往々にして、その歌手の力量に任され、楽譜に細かく旋律が書かれているというよりは、アドリブ的な要素によって、どのようにも展開されるメロディーのことを言う。
この曲における後半のジェジュンの歌は、まさにオブリガードと言えるものであり、彼のアドリブ的な要素によって、どのようにでも歌えるほど、声帯の動きが自由になったのを感じる。
まさに自由な大空に歌声がどこまでも羽ばたく、そんな感じだ。
それぐらい雄大な景色をオブリガートから連想させるのは、彼の自由になった高音部の発声のせいかもしれない。
よくジュンスがオブリガードを歌っている。それと比べてみればよくわかる。
オブリガードはあくまでも曲の雰囲気や主旋律を壊してはいけないのだ。単なる添え物なのだから。その添え物をどのように表現するか、によって、その歌手の音楽に対する意識が見えてくる。
オブリガード一つとっても、性格や嗜好は顕著だ。
彼のオブリガードと他のメンバーのオブリガードを聴き比べれば、なぜ、彼の歌声に惹かれるかの答が出るだろう。
たかがオブリガード、
されどオブリガードだ。



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Review vol.19 「Begin」

※reviewの加筆文は、最後に書いています。



Vocal review vol.19 「Begin」
2006.6.21 6th Single
作詞 小山内舞
作曲 JIN NAKAMURA



この曲はとても懐かしい曲ですね。
彼が日本へ来て、日本語の歌を歌うようになって 6曲目の歌です。
そして、彼が初めてメインパートを沢山、歌っています。
彼がメインの長いフレーズ歌う事によって、「東方神起」の音色が今までのハスキーで直線的な調べから、ソフトで曲線的な流れに変わりました.

それまで、彼は少しずつですが、長いフレーズを歌わせてもらえるようになっていました。
彼の初期の声の特徴である「透明感」と「少しハスキーな声質」の特徴がよく出ています。
また、初期の歌い方である「地声」で歌っているにも関わらず、伸びやかな歌唱を披露しています。
これは、この歌の音域ラインが彼のヴォイスチェンジにひっかからない、ちょうどいい音域で展開されているためだと思います。

発声的には、上あごの部分にとても声がよく当たっています。
喉の奥がとてもよく開いた状態なので、綺麗に声が伸びますね。
彼の初期の歌唱の代表曲です。


彼の歌唱は、最初出てきません。
今まで多くの曲が彼の歌唱から始まりましたが、この曲は、サビの部分まで全く歌いません。

曲の構成として、他のメンバーが歌い終わり、満を持して登場するのが彼の「everyday…」
に始まる歌唱です。
その後は、彼のソロがずっと続きます。

この曲で彼の歌唱力がベールを脱ぎます。

いつも思いますが、この人は持って生まれた伸びやかな声とは別に、独特の音楽感を持っています。
それは、曲の持つ雰囲気に自分の声も歌唱方法も見事に合わせてくる点です。
今でこそ、「七色の声」などと言われたりしますが、この当時の彼の声には、そこまでの多くの色は持っていません。
しかし、曲が描こうとする世界の雰囲気を壊さず、歌唱によってその世界を見事に具現する力は、この当時から非凡なものが感じられます。

私が、彼に惹かれた一番の理由は、「彼の声」でも「彼の容姿」でもありません。
「彼の持つ音楽センス」でした。
彼のようなタイプの声の持ち主の歌手は、確かに私の好みです。
何人か、同じようなタイプの声の歌手を私は好みます。
けれども、その誰もが彼ほどの曲に対する世界観を持ちません。

彼が他の歌手に比べて抜きんでて秀でている部分は此処です。

曲の持つ雰囲気、曲の持つ世界…
それを見事に歌い切ります。
決して、それは、彼の世界観ではありません。
曲の持つ世界観の具現です。

多くの歌手…特に美声を持ち、歌唱力を売り物にする歌手は、えてして「何を歌っても同じ」に
聞こえる…○○節…という経験はありませんか?

美声の持ち主は、自分の声の特徴を往々にして披露しすぎるきらいがあります。
その為、どの曲を歌っても同じように聞こえるという危険を常にはらんでいます。

しかし、彼の歌唱には、そういう所がありません。
それは、彼の歌唱には「自分を押し付ける」という所が全くないからです。

彼の歌唱は非常に「しなやか」です。
どんな曲にも馴染む天性の「素直さ」が溢れています。

曲の歌い出し、フレーズの途中からメンバーの歌唱を引き継ぐときに特にその特性が顕著に現れます。
メンバーが歌ってきた雰囲気を決して壊すことなく、それでいて、自分が歌っている間に見事に自分の色に塗り替えていきます。

その為、多くの曲の中で彼の歌唱だけが、印象に残るのです。

決して「自分を押し付けない」
決して「自分を主張しない」

それでいて、歌い終わった後は、見事に彼の音色に塗り替えられている…

そういう歌手を私は知りません。


この彼の天性の音楽性と歌手としての才能に強く私は惹かれ続けるのです。

だから、彼のソロ曲をどれだけ、連続で聞いても決して飽きないのです。


この「Begin」は、彼の初期の地声による発声の完成された歌唱曲です。

「Begin」を歌うために彼は、大きく口を開け、口蓋を大きく広げる発声に行きつきました。

おそらく、日本語の発音と歌詞のことばに原因があります。

歌詞に母音の「エ」音や「ア」音、また「オ」音という縦に広げる言葉が多用されていました。
そして、その母音で長く伸ばすメロディー展開になっていました。
そのために、彼の口は、自然と縦横に広く開き、口蓋も自然と上に上がる状態になりました。

その結果、この曲での歌唱は、地声なのに見事に声のポジションが上に当たっているのです。

地声なのにハスキーさは、殆んど消え、伸びやかな発声になったのは、これらの原因にありました。


彼の歌唱方法は、この後、大きく変化していきます。

この曲が彼の歌手としてもターニングポイントです。

後日、彼が「それまでは、どうやって声を出して歌ったらいいのかわからなかった。Beginを歌って少し、歌い方がわかった」と話しています。

彼は、この曲で歌手として最初の開眼をしました。

彼は、この曲で身につけた感覚…「口蓋を柔らかくして発声する」という
歌手として最も重要なテクニックを感覚として獲得したと思います。




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2012年2月23日(アメブロの旧サイトにて初掲載)



【2017年7月7日 review 追記】

この曲のreviewを5年前に書いた時、書くべき事はすべて書き尽くしてしまいました。彼は、この曲を2014年12月のJYJichigoコンで5年ぶりに歌いました。
あのとき、彼の中に笑顔はなかった。
多くのファンが喜びましたが、私は彼の中の苦悩を感じました。
彼は、決して東方神起時代の歌を歌おうとしなかった。
「ファンの人のイメージを壊したくない」
それは、彼が彼自身に課した不文律のようなものに感じます。
その戒めを破ってまで、歌わなければならなかったことに彼の苦悩を感じました。ですから、5年ぶりに聞いた彼の「Begin」は、とても物悲しい歌声でした。
あのとき、ずいぶん話題になったのが、5年ぶりに歌った彼の歌声もパフォーマンスも5年前と寸分違わない、という事でした。
4thのコンサートでの歌とichigoコンでの歌の彼の部分を並べて同時に歌わせると、全く同じ歌声とパフォーマンスになるというものでした。
多くの歌手は、歌うたびに微妙に歌い方やパフォーマンスが変わる。けれども彼の場合は、全く変わらない、ということが多いです。それは、それだけ彼の中でその歌を完全に消化しきっているということであり、徹底した練習によって、いつ、どんな場合でも同じパフォーマンスと歌い方が出来る。そういう卓越した力を持つ歌手であり、その力の陰には多くの彼の努力が潜むということの顕れでもあります。
ただ、この曲を初めて歌った時と5年ぶりに歌った時とでは、声の出し方に決定的な違いがあるのです。発売当時の彼の歌声は、地声であり、5年ぶりに歌った時は、頭声です。にもかかわらず、彼の歌い方は全くぶれません。これは、声のだし方が違うだけであって、彼の中では、歌い方が確立されているからです。また、この曲は元々、日本語の歌であって、それを声の出し方を変え、数年ぶりに歌っても、曲に対するパフォーマンスは変わらない、ということになります。これが、日本ツアーで披露した「One Kiss」を始めとする5曲の韓国語の歌を日本語で歌った場合と全く異なる点でもあります。
韓国語の歌詞で歌う場合と、日本語の歌詞で歌う場合において、彼は、声の出し方も曲の解釈も変えています。それによって、同じ曲でありながら、全く印象が変わってくるのです。

彼の日本語の曲は、宝石のように彼の歌声を輝かせる。
それが、地声であっても、変わらなかった頃の歌声です。
この後の曲から、彼の歌声は、明らかに頭声へと変化していきます。
地声の歌声の最後の曲とも言える1曲です。